室内に使う材料の原則

室内に使う材料の原則

パッシブな家づくりに使用される材料は、健康に貢献する、安全である、エコロジヵルであるということが大前提になっています。ここでは、その大前提は当然のこととしてあえて触れずに少し違う観点から考えていきます。

室内に使う材料とは、具体的には、床、壁、天井に使われる材のことです。

それらのすべての材料に求められる共通の性能、それは、調湿機能すなわち湿気を吸ったり吐いたりする吸放湿性能です。

湿気の多い日本の気候風土では、絶対に必要不可欠な要素です。昔の家では、土や板で当たり前のように実現されていたのですが、戦後の家づくりの主流は、全く逆さの材料が前提となってしまいました。

今では調湿機能のない材料ばかりがメインとなりました。
合板フローリング、石膏ボードにビニールクロス、ベニアにプリントした天井、たまに塗り壁があると思えば接着剤で固めたにせものジュラク壁など。質感もなく、ぺラペラな材料です。それらが、安い、ピカピカときれいで?ホテルのようだ、などと錯覚され、ここ20〜30年も使い続けられてきました。

これらの吸放湿性のない材料とあいまって、断熱気密が進み、日本の住宅は結露やダニカビ、腐れなど湿気の害に悩まされ続けています。
これらの湿気対策は、間取りや建築工法といった、もっと根本的な対策が求められるのですが、同時に、室内に使用する材料も避けては通れません。
例えば、いくら断熱性能のよいペァサッシを使用しても、窓面の結露が防げるというわけではありません・室内の空気中の水蒸気量が多ければ、必然的にガラス面に結露する可能性は大きいのです。
この窓ガラスの結露を防ぐためには、断熱性能をアップするだけではなく、室内空気の水蒸気量を少なくする必要があります。

これまでの一般的対策は、換気扇、除湿機、エアコン、ふとん乾燥機など機械器具のオンパレードです。

最近では二四時間機械換気など、ますます機械に頼る傾向が強まっています。すぐに機械に依存してしまう前に、建築的手法でできる限りのことをしましょう、ということが、パッシブな家づくりの原点です。現実に、天井や壁、床などに、調湿機能のすぐれた材料を使用すれば、窓面の結露はグンと少なくなってしまいます。

具体的にどのような材が適しているのかを見ていきましょう。

まず、木です。無垢であること、塗装処理していないことが前提です。


国産であればより望ましいと言えます。接着剤で固めた集成材では、性能が落ちますし、ウレタンなどのケミヵルな塗膜をつくってしまっては、全く無意味になってしまいます。
塗装するのであれば、木材の呼吸を妨げないように、自然のオイルやワックスを薄く塗る程度にとどめましょう。本来は、何もしない無垢材が一番です。
天井板や壁板は、無塗装がベストです。

次に、塗り壁です。



最近は珪藻土などがもてはやされていますが、残念ながら、そのほとんどがケミカルな接着剤で固められています。
それでも、漆喰など自然素材だけの塗り壁材料もあります。


また、最近では、ありがたいことに、工業化製品の中にも、安全な上に調湿機能を持つ材料が出現してきました。

昔からある材料としては、ケイカル板、これは杉板より多少落ちる程度の調湿機能があります。それ以上の吸放湿性能のあるセメント系ボードや新しい石膏ボードなども続々と発売されてきました。
それらを下地として、湿気の通過を妨げない、透湿機能のあるクロスや塗料も発売されています。もちろん、安全な素材として。

こうした組み合わせで、床、壁、天井を構成することは十分に可能となりました。
国産の無垢板でも、節を許容できれば、そんなに高いものではありませんし、さらには、板、塗り、塗装、クロスと多種に亘りますから、自在な設計表現も可能になりました。
ぜひ、これらの材を室内にたっぷりと使用しましょう。

しかし、最後に吸放湿性の高い材料の恐ろしい点にも触れておきます。

これらの材料を使うためには、守らなければいけない前提があります。それは、風通しのいい所や太陽の恵みのある所で用いるということです。



吸放湿ということは、湿気を吸う、吐く、ということです。
吸うという機能は、材料さえあればいいのですが、一旦吸いこんだ湿気を吐き出すためには、風通しや熱がかかることが必要になります。

閉じ込められた、風通しの悪い場所や太陽の恵みのとどかない場所では、せっかくの調湿性能も一瞬であって、長期にその機能を発揮することはできません。床下に置いた炭にカビが生えたという笑えない笑い話はそうした環境から生まれます。

田中慶明
やっと出会えた本物の家より

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