断熱材二つの条件

断熱材としての二つの最低条件

断熱材ほど、功罪の極端なものは少ないのではないでしょうか。


パッシブで健康な家づくりにも欠かせないものですし、一方、湿気の害を呼び、建物を腐らせたり、ダニ・カビ・アレルギーの連鎖反応もおこしたりするのですから。

功罪半ばということではなく、選び方と使い方によって、被害を呼ぶか、健康な家づくりに貢献するか、二つに一つという極端な効果の現われ方をするようです。

そして現実は、発見されずに気づいた時は手遅れという進行性のガンのような恐ろしい状態の方が、健康に貢献している率よりはるかに多いのだと思います。

ここでは断熱材とその施工に求められる最低限の条件を考えていきます。

まず繰り返しになりますが、断熱とは、熱的に空間を分断することです。熱の出入りを止めることが目的です。


ここから一番目の条件が出てきます。 

「隙間のない施工」です。

隙間とは、
実際にできる空隙
と、熱が伝わる熱橋の二つになります。

隙間のない断熱施工の原則は、断熱材どおしが離れることなく連続して施工されることです。この観点から見ると、すべての充填断熱は、失格になります。在来軸組工法であれば、グラスウールが柱と柱、土台と梁の間に充填されます。従ってグラスウールはそれらの木材で分断された状態になります。

木材は、比較的熱を伝えにくい材料ですが、断熱材に比較すれば格段にその性能は落ちてしまいます。すなわち、断熱材で被われていない木材部分から熱が逃げるということになります。

この木材部分を熱橋と言います。

ツーバイフォーなど、パネルの間に断熱材を入れても枠材などが熱橋になります。そして、この熱橋部分は、無視できないほどの面積になってしまいます。

外張り断熱は、それらの木材の上から家一軒すっぽりと被いますから、ノウハウさえしっかりしていれば熱橋を防ぐことが可能になります。一方、充填断熱はいくらがんばっても熱橋はなくならない欠陥工法なのです。

そしてもっと情けないことに、柱や梁とグラスウールの間にも、実際上の隙間がどうしてもできてしまいます。

この隙間に、結露が発生して、木材を腐らせる例は枚挙にいとまがありません。
隙間は、結露を発生させる危険性の極めて高い場所となります。その結露水は、グラスウールの繊維の中に浸入していき、グラスウールをぬれ雑巾と同じ状態にしてしまいます。

同様に、施工中の雨や空気中の水蒸気、木材の水分、塗り壁の水分、入居後の生活の水蒸気とグラスウールを襲う水蒸気はどこにでもあります。

ここから二番目の条件が生まれます。

「断熱材そのものは、湿気を吸わないものにする」
です。


雨が多く、湿度の高い日本です。北ヨーロッパや北米とは異なる気候風土なのです。施工中に雨にぬれても心配のない断熱材が必要とされます。

吸放湿性の高い材料、例えば木材や土などは日本の湿気を調整してきた、従って、断熱材も吸放湿性があった方がいいとの論議もありますが、実際上は危険と背中合わせです。

いったん断熱材に入り込んだ水蒸気は簡単には抜けません。布団の綿がぬれると、乾かすのは本当に大変なことです。まして、壁の中や天井の上、床の下など日光の当たらない所で、ぬれてしまった綿状のグラスウールなどが簡単に乾くわけがありません。最初から、雨にも強い断熱材を選択しておく方が、はるかに安心で安全なことです。

この、「隙間をつくらない」ことと、「水や水蒸気を含まない」という、たった二つの原則を満たす断熱材は、極めて少ないのです。まずグラスウールなどの充填断熱タイプは失格です。

わずかに該当するのが、外張りの断熱ボードです。数種類のタイプがありますが、これも多くの問題を残しています。

湿気に強いという点では、すべて合格なのですが、いずれのボードも化学物質から成り立ち、自然素材で構成されてはいません。例外として、ガラス発泡のボードがありますが、コストが極めて高く使いきれるとは思えません。

炭化コルク板というボードもありますが、もろく、湿気を吸う、コストもやはり格段に高いとやはり、日常的に使用できる段階にはきていません。そうなれば、化学物質で構成されたボードから選択するしか、方法はありませんが、その選択の第一は、やはり、隙間ができない施工が安定的にできるかどうかです。

ボードの硬さやもろさ、カッターなどでの切断性の良さなどは、現場での施工性を左右します。そうなると、もうほとんど限られた種類しか適用できるものがないという、情けない状態が現状なのです。

それでも、最近は少し希望の持てる状況になってきました。化学物質であることに変わりはないのですが、燃えずに炭化するだけとか、ガスの発生がかなり少なくなったとか、断熱性能がさらに向上し薄くて済むとか、薄いということは、ボードさえしっかりとした構成であれば、隙間のない施工性に大きく貢献します。

これから先、こうした素材が続々と登場してきそうな予感がします。こうした中から、間違いのない断熱材を選択していきたいものです。

田中慶明
book 「やっと出会えた本物の家」より

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