今回のテーマは「我が子に語る」というタイトルだが別に自分の子供だけが対象ではない。私にも40代前半の娘がいるが、その位の年代の方に向けて親心、お節介、老婆心いや老爺心が入り混じった気持ちで話を進めていきたいと思っている。
家づくりはお金さえあれば簡単だと思っている方も多いだろう。
住宅展示場に行って何となく気に入った家を選んで建てればどうってことはないよと。
確かにそう割り切ってしまえば、さほどの事はないかもしれない。
しかし住んでから時間の経過とともに不満があふれ出し後悔の念に駆られることも稀ではない。よく「家は3回つくらないと納得いくようにはならない」と言われる。
それが多くの現実を表している言葉だ。
家をつくるという事は単に、住む箱という物質をつくる作業ではない。
家族の暮らしが展開されるスペースが家だ。その暮らしを支える空間づくりなのだから真面目にとらえれば中々大変な作業だろう。
では実際にどんな不満を家に感じているのだろうか。家づくりに関わって40年、色々の方からお聞きした事を思い出してみよう。
思い出すままに列記してみる。
狭い。暮らしにくい。収納が少ない。使ってない部屋が多い。ダサい。
寒い。風通しが悪い。日当たりが悪い。暑い。湿っぽい。何となく臭い。
部屋と廊下などの温度差が大きい。結露が多い。カビがなくならない。
建築後30年も経っていないのにガタガタだ。
細かくあげればきりがないが、多くの方に共通している不満な事柄をあげてみた。
暮らしは続いていく。家づくりの難しさは、この時間の経過だ。建てた当初は満足度が高くても暮らすにつれて満足度は低下し、ああすれば良かった、こんなことしなければ良かったと感じることが増加し不満はつのり後悔の念に悩まされる方も少なくはない。
時間はすべての要素を変える。子供は成長し、大人は歳をとる。それと共に家に暮らす家族の人数も変化していく。増える場合もあるし減る場合もある。それに応じての空間の変更が簡単ではない。温度や湿気などの環境の変化に鈍感にも敏感にもなる。階段が辛くなる、段差が気になっても来る。寒さや暑さ、温度差が身に染みるようにもなる。どこからともなくドブ臭さのような異臭がしてきた。
こうした不満は仕方のないことのように思えるかもしれないが、その多くは家のつくり様で解消できることも多い。
使い勝手は間取りの工夫で、寒さ暑さは家の建て方の工夫でかなり乗り越えられるし、時間の変化にも柔軟に対応できる家づくりは可能だ。これからそんな話をしていこう。