家を買うから家をつくる時代へ

「家を買う」から「家をつくる」時代へ

ちょっと、いやだいぶ時代に逆行して、大工さんでしかつくれない家をつくるんだ、と声を大にしている。

まず図面を見てもらう。面倒くさそうな顔をする大工さんだったら、きっといい家はつくれない。かつてはかなりこだわった家づくりで腕を振るっていたという人でもそういう顔をする、それはしばらく「だいはち」で済むような仕事をしていて、それに慣れてしまったのだと思う。

同じように生活のため自分の技術が生かせない仕事をしていても、いつか機会があれば腕を振るいたいと思っている大工さんだったら、図面を見るや、「お-つ、こういう仕事したかったんだ」と、気持ち良い返事が返ってくる。

少人数でこつこつと自分の姿勢を曲げずに納得のいく仕事だけをしている大工さん。 

家づくりは、こうした大工さんたちによって成り立っている。こうした棟梁の現場でいざ上棟となると、これまた素晴らしい。同じような考えの仲間が数人、ばっちりのチームワークで意気揚揚と組み上げていく。

類は友を呼ぶ、まだまだ世の中捨てたものでない。それは大工仲間つながりだけでなく、いろんな職種の職人へと繋がっていく。 この前の上棟で手伝っていた大工さんが、次の現場では棟梁、すると、前の現場の棟梁や同じく仲間の大工が上棟の時には駆けつけてくれる。

そうなれば職人さんたちを、職種で呼び合うようなこともなくなり、○○さんということになる。もともと職種で呼ぶのはおかしいのであって、名前で呼び合うことが本来の姿と思う。

和やかな現場、きれいな現場、現場は家づくりに関わる人間の姿勢、家づくりに向かうこころがそのまま反映される。特に職人さんが楽しく仕事している現場は気が入っていてあたたかい。だから、時間も手間も惜しまない、そんな家づくりにこだわり続けたい。

ただ、人の手がかかるものはお金もかかる。後は、お金の使い方ということになってくる。予算の中で、お金のウエイトをまず手の部分にかけてほしい。

家づくりは、ソフト面ハード面と両側面からのさまざまな検討を要求され、しかも何年もいや何十年も先へ目をやらなければならない。家のつくり方や材料の選定を誤れば、家は腐り、人間の肉体がそして神経までが狂ってしまうとあれば慎重にならざるを得ない。

その慎重さやシビアな目が、下手をすると手づくりの良さを否定してしまうことにもなる。

現場で手でつくっている限り、工場でつくる製品のような精度は求められてもできない。

床に無垢の木を使った場合、乾燥等きちっとした管理のもとにつくられた板材でも、多少の伸縮は生じるし、いろんな条件が重なればきしみ音などもでてくる。建具だって手づくりであれば、季節によって動きが悪くなり調整が必要となってくる。工場生産の新建材のドアや枠材であればそうした心配は少ない。

手づくりの味わいは一つとして全く同じものはできないこと・ましてや使う木だってみんな無垢の木は違う表情をしている。しかも無垢の木は割れたり狂ったりという自然の性格がある。それがいやだと集成材を使う、工場で組みたてたパネルになる、さらには木は止めて、鉄やコンクリートの家にということになってしまう。

色合いも材質もばらつきのない既製品、工業製品を寄せ集めてつくられる家、カタログや展示場で見た家とほとんどイメージの変わらない家がほしかったら家は買うという選択になると思う。

私たちは、家づくりを決心されるまで、できるだけ多くの建築中や完成住宅、入居者宅をご案内している。どういう家づくりをしているか、その施工レベル、使っている材料を見ていただき、体感していただく、実際に建築した方からのアドバイスを聞いていただく。

そして、伴にする時間が長ければそれだけお互いの考え方が理解し合えるし、家づくりに対する基本的な姿勢が合うかどうかの判断にもなると思う。

間取りも、仕様もデザインも一つとして同じ顔のものはないし、同じ木を使っていても架構、柱や梁の出し方によってさまざまな個性が現われてくる。住まいに工業製品のような均一の精度を求めれば、家をつくるということからどんどん遠ざかってしまう。キッチンだって、家具だって自然の安全な材料で手づくりにしたいと思っている。

何人もの人の手によってつくられていく家、その一人ひとりの思いが伝わって、目に見えない気、パワーが生み出される。そうした気持ちの入った、一つひとつ違う顔、違う個性の住まいをつくり続けていきたい。

若林礼子(2008.9故人となりました。)


book やっと出会えた本物の家 より 2003.12

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